眼内レンズのご案内

白内障手術で使う
眼内レンズについて

白内障手術では、ご自身の水晶体の濁りをきれいに取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入します。
眼内レンズには大きく分けて2種類があり、単焦点眼内レンズ(保険適応)と、オプションである多焦点眼内レンズのどちらかを選ぶこととなります。

単焦点眼内レンズは、遠く、もしくは近くのどちらかが眼鏡をかけないでよく見えるようになります。
メリットとしては、保険適応のため治療費を抑えられるという点、およびその設定された距離については見え方の質が非常に良いという点があります。一方、デメリットは、ピントが合う距離が狭く限られているため、その他の距離を見る際には眼鏡をかける必要があるということです。
多焦点眼内レンズは、遠くから近くまでの広い範囲でピントが合った見え方を得ることができるため、従来の単焦点眼内レンズと比べて眼鏡を使う頻度を減らす(老眼を軽くする)ことができます。
非常に便利なものですが見え方には多少のクセがあり(後述)、慣れるまでに2週間から数ヶ月程度の時間がかかることがあります。また、多焦点眼内レンズの材料費は保険適応外となり、単焦点眼内レンズと比較すると高額となります。

●単焦点眼内レンズの見え方
単焦点眼内レンズの見え方
●多焦点眼内レンズの見え方
多焦点眼内レンズの見え方
●見え方のイメージ図
見え方のイメージ図見え方のイメージ図

レンズによる
見え方の違い

単焦点眼内レンズの場合には、もともとの眼が正視か遠視の方は遠くにピントを合わせ、近視の方は手元にピントを合わせるのが一般的です。遠くにピントを合わせると、たとえば富士山を見たり、ゴルフや車の運転をするときには眼鏡をかけずに見えるようになりますが、手元の近い距離を見るときには老眼鏡が必要となります。逆に手元にピントを合わせると、読書やパソコンの距離は眼鏡をかけずによく見えますが、遠くを見るときには眼鏡が必要となります。

このように「遠くか近くか、どちらか一方がよく見える」というのが単焦点眼内レンズです。
この場合に最も大切なのは、「もともと眼が良かった方」は「遠く用」を、「もともと眼が悪かった方(近眼だった方)」は「近く用」を入れる、ということです。これを逆にしてしまうと見え方の違和感が強くなってしまうため、推奨されません。特にもともと強い近眼の方は、遠く用の単焦点眼内レンズを使ってしまうとそれまで不自由なく見えていた手元の距離がぼやけてしまい、見え方の質が下がってしまいます。つまり、単焦点眼内レンズは患者さんごとに適応となる距離が違いますですので、術前検査の際に個別にご説明しています。

一方、多焦点眼内レンズは「遠くから近くまで広い範囲にピントが合った見え方」となります。
もともとが正視、遠視、近視のいずれであっても、遠くの距離から近い距離までに広くピントを合わせることができます。日常生活や、スポーツ・観劇・登山などといった趣味を楽しむ際にもなるべく眼鏡やコンタクトレンズを使わずに過ごしたい、といった方に適しています。

また、近年では地震や水害などの災害があった際に眼鏡やコンタクトレンズに頼らずに見ることができる、という利点が注目されています。当院では安全性と有効性の観点から厚生労働省が薬事承認した以下の3種類の多焦点眼内レンズを導入しています。(シンフォニー®(焦点深度拡張型)、シナジー®(連続焦点型)、パンオプティクス®(三焦点型))。
それぞれに違った特徴がありますので、ご自身のライフスタイルに合わせて検討頂くことができます。

レンズ紹介

AlconAlcon

当院では主にアルコン社製の単焦点眼内レンズ(クラレオン®)を使用しています。

シンフォニー

シンフォニーシンフォニー

シンフォニーはAMO社製のレンズで、遠くから50cmくらいの近くまでがカバーされたレンズです。
コントラスト感度が非常に良いことが長所で、ほぼ通常の単焦点眼内レンズと同等のコントラストが得られます。色がきれいに感じられ、夜間のハローやグレアも少なく、「自然な見え方」と評価されています。ただし40~50cm未満の距離まではカバーされておらず、たとえばスマホや読書の距離はややぼやけて感じます。「なるべくきれいで自然な見え方がいい」、「どうしても必要なときなら老眼鏡を使っても良い」という方にお勧めできるレンズです。

シナジー

シナジーシナジー

シナジーは、シンフォニーと同じAMO社製のレンズで、遠くから33cmの手元までにピントが合っています。焦点深度拡張型レンズであるシンフォニーと、旧来の二焦点眼内レンズの技術を融合し設計された比較的新しい世代のレンズですので、老眼鏡に頼る頻度がさらに軽減されています。
33cmの手元まで見えるため、やや小柄な体型の方にも合った設計です。シンフォニーと比べるとコントラスト感度はやや劣ります。「しっかり手元まで見たい、なるべく老眼鏡に頼らず生活したい」という方にお勧めできるレンズです。

パンオプティクス

パンオプティクスパンオプティクス

パンオプティクスは、すべての距離にピントを合わせたレンズです。コントラスト感度も良く、遠くから中間距離、および手元の40cm程度までの近くまで良い視力を得ることができます。
ハロー・グレアといった光のにじみは多少感じられますが、遠くから手元までピントがしっかり振り分けられている最も高機能な部類の多焦点眼内レンズです。「しっかり手元まで見たい、なるべく老眼鏡をかけたくない」という方にお勧めするレンズです。

白内障手術を受ける上での
注意点

※単焦点眼内レンズを選択する場合、主にアルコン社のクラレオン®を使用します(患者様ご自身がメーカーや種類の指定はできません)。

※手術中の眼の状態によっては、予定していた眼内レンズを入れずに終了する場合があります。また、多焦点眼内レンズの予定だった方でも、術中の状態によっては通常の単焦点眼内レンズへと変更せざるを得ない場合があります(代表的な原因として、毛様小帯脆弱・断裂、後嚢破損などの合併症)。
多焦点眼内レンズから単焦点眼内レンズへ変更となった場合には、多焦点眼内レンズの費用は発生せず返金させていただき、保険診療分のみのご請求となります。

※一度挿入した眼内レンズは基本的には「一生もの」で、30年から50年ほどもつように設計されています。ただし、眼内炎、眼内レンズ偏位、眼内レンズの物理的な損傷、前房内異物、大幅な屈折誤差などといった合併症が起こった場合、眼内レンズを取り出したり入れ替えたりする再手術が必要となることがあります(合併症の治療費は保険適応です)。

※合併症ではない理由(例:「遠く用の単焦点眼内レンズにしたが、思ったより手元が見えづらいのでやはり多焦点眼内レンズに変えて欲しい」「期待していた見え方と違うので違うメーカーの多焦点眼内レンズに交換してほしい」など)でレンズを入れ替える手術を行う場合には、保険適応外となります。また、その場合、初回手術でお支払いいただいた治療費(眼内レンズ代金を含む)は返金致しかねます。そのため、使用する眼内レンズについて事前によくご検討を頂くことが大切です。

※手術については詳しくご説明する機会を設けております(手術の約1~2週間前に予約をお取りします)。ご質問がございましたらいつでもご相談ください。

白内障術後の
見え方の注意点

■術後には、調節力という「自分の水晶体が厚みを変えてピントを調節する機能」は完全に失われます。特に単焦点眼内レンズを入れた場合には、一般的に言われる「老眼」の状態となります。
つまり、遠く用の単焦点眼内レンズを入れたかたは老眼鏡をかけないと手元にピントが合わせられません。また、近く用の単焦点眼内レンズを入れたかたは、遠くを見るための眼鏡をかけると手元にピントが合わせられません。また、多焦点眼内レンズを入れた方でも、状況によっては眼鏡が必要となる場合があります。

■ハロー・グレアという光のにじみを感じる場合があります。単焦点・多焦点ともありますが、多焦点眼内レンズの方が感じやすいことに注意が必要です。

通常の見え方
ハロー・グレア見え方
強いハロー・グレア見え方

画像提供:
エイエムオージャパン株式会社

■多焦点眼内レンズはコントラストの低下を感じる場合があります。単焦点眼内レンズではコントラスト低下はほとんどありません。

通常の見え方
コントラスト感度の低下した見え方

多焦点眼内レンズにおけるハロー・グレア、およびコントラスト感度の低下は、手術の直後が最も感じられやすいものです。一般的には数ヶ月かけて脳が順応していきますので、さほど心配する必要はありません。単焦点・多焦点ともに、普段通り生活する中で眼をよくお使い頂くと、じきに馴染んでいきます。

また、単焦点眼内レンズは様々な眼の病気が併発している患者様でも使用することができますが、多焦点眼内レンズの場合にはある程度の必要条件があります。以下のような方は多焦点眼内レンズが推奨されない場合があります。

  • 角膜(黒目)の病気があるかた
  • 瞳孔のサイズが大きすぎる・小さすぎるかた
  • 重度の緑内障などの視神経、網膜の病気があるかた
  • 眼瞼下垂・眼瞼内反など、まぶたの病気があるかた
  • 飛行機のパイロットやタクシー・トラック運転手のかた

白内障手術全般に言えることですが、見え方に影響するような白内障以外の目の病気をあらかじめ見つけ出しておくことが大切です。当院では、手術の適応検査の際にこれらを詳細に調べて、見え方に影響するものが無いか丁寧に検査しています。そのため検査内容が多くなりますがご理解いただけると幸いです。また、上記のような病気が見つかった場合には必要に応じて治療を行うことがあります。

料金表

レンズ種類 単焦点 多焦点
遠く用 近く用 シンフォニー® シナジー® パンオプティクス®
遠くの見え方
(5m~∞)
×
中間の見え方
(50~75cm)
× ×
近くの見え方
(30~40cm)
× △~○
ハロー・グレア なし なし あり あり あり
コントラスト
感度
○~◎
追加負担額
(片眼あたり)
0円 0円 乱視矯正なし:
170,500円
乱視矯正あり:
225,500円
乱視矯正なし:
280,500円
乱視矯正あり:
335,500円
乱視矯正なし:
267,300円
乱視矯正あり:
316,800円